前回の問題の投稿から少し時間が空いてしまいました。
その原因は問題2の解答が複雑だったためです。
まだ解答になってないんじゃないかという内容ですが、答えが出そうにないので一旦更新します。

問題1

平成27年4月1日に設立した医療法人社団で、定款に「最初の理事の任期は平成29年3月31日までとする」という規定がある。この法人が、定時総会を平成29年3月31日に開催し理事を予選した。理事の構成に変更があったため、理事の選任の効力が生じた4月1日の午前9時に、理事の互選により代表理事の選定をした。この選定に基づき、理事長につき「平成29年3月31日退任、4月1日就任」の登記がされた。
その後、平成31年3月31日に定時総会及び理事の互選による理事・理事長の予選を行い登記をする場合の理事長にかかる登記の登記の事由と登記日付はどうなるか?
なお、平成31年3月31日の理事と再選後の理事の構成は同一である。

解答

「平成31年4月1日重任」を原因として理事長の再任の登記をする。

解説

登記上の前回の登記日付が「平成29年4月1日就任」となっており、さらに理事長選定がその日の途中からであることから、初日不算入で計算し、理事長の任期は4月1日24時までとしてしまいそうなところです。
しかしながら、前提資格である理事の任期が3月31日ですので、回答のような日付になります。前提資格である理事の任期もしっかりと確認する必要があります。

問題2

平成16年4月1日に理事長の就任した登記以来、登記を懈怠していた。
平成29年4月1日理事全員再任、理事会において理事長の選定を行った。
この場合の理事長にかかる登記の登記の事由と登記日付はどうなるか?

なお、この医療法人の平成19年4月改正前の定款には、次の規定がある。
 1、役員の任期は2年とする。ただし、再任を妨げない。
 2、補欠により就任した役員の任期は、前任者の残任期間とする。
 3、役員は任期満了後といえども、後任者の就任するまでは、その職務を行うものとする。

解答

「平成29年4月1日重任」を原因として理事長の再任の登記を行う。
or
「平成23年3月31日退任」を原因として理事長の退任の登記を行う。
(その後の登記をどうするかは現在調査中(汗))

解説

平成19年4月改正前の定款規定の知識が必要となります。平成19年4月改正後は理事の任期は2年を超えることができないこととされましたが、改正前には任期に関する規定はなく、各法人が定款で上記のように定めているのが一般的でした。そして、上記定款規定の3項の項目を「任期伸長規定」と解釈をして、任期満了後につぎの理事が選任されるまでは任期が伸びるものとされていました。そうすると、任期は再選時まで伸長されて平成29年4月1日に退任となりそうです。しかしながら、ここでさらに落とし穴があります。
   

なんと改正に伴う経過規定の解釈が分かれている!~理事長任期は伏魔殿~

『良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法の一部を改正する法律(医療法の一部改正)』の中に次の附則があります。

(役員の任期に関する経過措置)
第十一条  この法律の施行の際現に医療法人の役員である者の任期は、新医療法第四十六条の二第三項の規定にかかわらず、この法律の施行の際におけるその者の役員としての残任期間と同一の期間とする。
→(超解:改正前に選ばれた役員の任期は、改正前の任期で考える)
(定款又は寄附行為の変更に関する経過措置)
第9条 施行日前に設立された医療法人は、施行日から1年以内に、この法律の施行に伴い必要となる定款又は寄附行為の変更につき医療法第50条第1項の認可(2以上の都道府県の区域において病院、診療所又は介護老人保健施設を開設する医療法人にあっては、新医療法第68条の2第1項において読み替えて適用する医療法第50条第1項の認可)の申請をしなければならない。
→(超解:1年以内に定款変更しなさい)
2 施行日前に設立された医療法人の定款又は寄附行為は、施行日から1年を経過する日(前項の規定により定款又は寄附行為の変更の認可の申請をした医療法人については、当該申請に対する処分があった日)までは、新医療法第6章の規定により定められた定款又は寄附行為とみなす。この場合において、当該定款又は寄附行為と同章の規定が抵触する場合においては、当該抵触する部分については、同章の規定は、適用しない。
→(超解:1年は改正前の定款を新法でも定款として認めるけど1年経ったら新法で規律する)

要するに、改正法施行から1年しか定款変更についての猶予はいただけてないわけなのですが、附則第11条を優先させて、役員改選まで任期伸長していると解する見解(一部法務局)と改正法施行から1年経過する平成20年3月31日に任期満了退任するという見解で分かれているようです。医療法の改正の趣旨からすると、役員の任期を2年と定めることで適切な法人運営を期待しているわけですから、後者の見解のほうがよろしいのではないでしょうか。
実際に登記するとなると事前相談となりそうです。

さらには、「平成23年3月31日退任」で理事長の退任登記をしたあとはどうするのか??
役員不在で「仮理事の選任」はたまた「社員総会での理事の再選」(していたことにする)のか??

底なし沼のような医療法人社団の理事長の登記ですが、平成28年にも改正がありますね。
こちらはまた別記事にします。

内藤先生のブログです。
医療法人の理事の任期と平成18年改正医療法の経過措置について

第2版 Q&A法人登記の実務 医療法人