さて、引き続きお問合せが来ている種類株主総会のの決議の要否についてなのですが、今回のお問い合わせは次のような内容でした。
「普通株式とA種類株式の2種類の株式を発行している会社で、普通株式を発行したいのだけど、この場合に必要になる決議は何??」とのこと。
この会社の株式はすべて譲渡制限がついています。
事情を説明するとA種類株式の株主さんは非常に細かい方でなるべく決議に関わってほしくないのです。

さて、この場合に必要になる決議はなんでしょうか??
前回までの手順に沿って考えていきましょう。

まず、
① 全部取得条項の付加する定款変更(111Ⅱ) 
② 譲渡制限条項を付加する定款変更(111Ⅱ) 
③ 取得条項を付加する定款変更(111Ⅰ)
ではありませんので、ここはスルーします。

次に、
譲渡制限株式を募集する場合の募集事項を決定(199Ⅳ)し,又は,募集事項の決定の取締役・取締役会への委任(204Ⅳ)するとき
これはばっちりこれに該当してしますね。
では条文を確認しましょう。

199条4項
種類株式発行会社において、第1項第1号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

そしてこの条文の趣旨については、
199条4項の趣旨は、「譲渡制限の付された種類株式の株主は当該種類株式における自己の持分の比率の維持に関心を有する場合があると考えられることから、当該種類の株式の募集につき種類株主総会の決議を必要としたものである」(商事法務1741、22頁)
とされています。

したがって、今回の普通株式発行のために必要になる決議は「株主総会決議」と「普通種類株主総会決議」となります。
無事にA種類株主総会は不要となりましたが、A種株主も全体の総会についての議決権は保有しているので、A種類株主の関与が一切不要とはできません。残念。