取締役及び代表取締役が1名の会社において、取締役を追加する場合の添付書面についての検討です。
非常にシンプルな事案で、いまさら感もありますが、実は会社登記添付書類の巡る混沌の一端を垣間見ることができる登記なのであります(大げさ)。

さて、前提条件として、次の2点としましょう。謄本と定款を確認したところ、次のような内容だったとします。
1、取締役・代表取締役1名の会社
2、定款に「取締役が2名以上の場合は、取締役の互選により、代表取締役を定める」旨の規定がある。

この場合に、代表権の無い取締役(以下、平取締役とします)を追加する場合の添付書面はどうなるでしょうか?
1、株主総会議事録
2、平取締役の就任承諾書
3、印鑑証明書

ここまではみなさま異存はないと思いますが、
4、取締役の互選書??
5、代表取締役の就任承諾書??
6、定款??

このあたりはどうでしょうか。
なんだかよくわからないから、ハンコもらって添付しておけ、というのでは悲しいではありませんか。

個人的な見解としては、1~5までは作成・押印しておいて、登記の添付書面とするのは1~3でよろしいかと考えます。
代表取締役については登記事項とならないため、これに関する添付書面も不要なはずです。

また、商業登記に関するいわゆる「善解の理論」からも不要といえると考えます。
(いわゆる、なんて書きましたが、いわゆれるほど一般的ではない気もするので引用しておきます。
「善解の理論」(神崎先生の「商業登記に強くなる本」の有名な箇所です)。
「登記官が、添付書類を通して実態上の手続きが適正に実行されているかどうかを判断する場合、添付書類からは実態の手続きが適正に実行されていないのではないかという疑問があるときでも、適正に実行されていると解される余地がある限り、申請人の主張を認めて、登記官としては、実体上の手続きは適正に実行されていると解するのである。実は、この場合の登記官の基本的スタンスが「善解の理論」である。)