「重要な財産の処分」を行うときに必要な決議は何か

お取引先の株式会社は圧倒的に取締役会非設置会社が多いわけですが、たまにご質問があるのが「これは総会決議事項でしょうか?」というお問い合わせです。

(不安ならとりあえず決議とっておけばいいじゃないの)と心の中では思いつつも、中には株主が多数の会社もあり、株主総会を開催するコストも意外とかかるという場合もありますので、きちんと調べてお答えしなくてはなりません。

今回は、会社の規模からしても大掛かりな財産の処分があるケースでした。

取締役会非設置会社で「重要な財産の処分」を行うときに必要な決議は何かについて調べたところ、葉玉先生のブログに回答がありました。

会社法であそぼ。2006年05月23日

Q3
葉玉先生、取締役会非設置会社に関連してお教えください。
1、募集社債について
(1)取締役会を設置していない株式会社でも社債の発行ができると思いますが、この理解で正しいでしょうか?
(2)発行可能として、取締役会のない会社では、676条1項の決定は誰が決定するのですか?取締役(取締役の過半数)でしょうか、また特定の取締役に委任することも可能でしょうか?
2、取締役会設置会社では取締役会がその決定を取締役に委任できない事項とされる多額の借財、重要な財産の処分及び譲受け(362条4項)は誰が決定するのでしょうか?取締役(取締役の過半数)でしょうか、また特定の取締役に委任することも可能でしょうか?
Posted by かさぶらんか at 2006年05月21日 21:31
A3
(1)非取締役会設置会社でも、社債を発行することができます。
(2)社債発行は、業務執行の決定の一つですから、取締役の過半数が原則ですが、各取締役に委任することができます(348条2項3項)
2 取締役の過半数ですが、特定の取締役に委任することができます。348条2項3項のとおりです。

 

「重要な財産の処分」は、取締役会設置会社であれば、各取締役に委任できない、すなわち、取締役会決議で決定する(362条4項1号)。

これに対し、取締役会非設置会社であれば、各取締役に委任できないわけではない、すなわち、取締役で決定するが各取締役に決定を委ねることもできる(348条)となります。

なお、上記のように取締役会設置会社では「重要な財産の処分」に当たるかの判断が必要な場合があるのですが、これについては判例が判断基準を定立しています。

「重要な財産の処分」に該当するか否かは、①当該財産の価額、②その会社の総資産に占める割合、③当該財産の保有目的、④処分行為の態様及び⑤会社における従来の取扱い等の事情を総合的に
考慮して判断すべきものである(最判平成6年1月20日)。

また、取締役会決議を欠いた場合の効力は取引の安全の保護から原則有効とされています。

重要な財産の処分について取締役会の決議を得ないでなされた代表取締役の行為の効力について、判例は、原則として有効であって、取引の相手方が上記決議を得ていないことを知りまたは知ることができた場合に限って無効である(最判昭和40年9月22日)。

新会社法100問 【第2版】