相続財産の再分割協議を行った場合の登記手続きについて

遺産分割協議をして、登記まで完了してしまったのだが、遺産分割協議を再度やり直して、再分割した内容に基づいて登記をしたいとのご相談がありました。
再分割については、相続人の全員の合意で行うことができます(最判平成2年9月27日)。

それでは、再分割をしたときに登記手続きはどのように行うのでしょうか。
これは、既に完了した登記がどのような内容であったかにより、違いが出てきます。

完了している登記が年月日相続を原因としたものである場合

この場合は、現在の登記を「錯誤」により抹消をして、その後に再分割後の内容で年月日相続を原因とする登記を申請します。
抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円です。

完了している登記が年月日遺産分割を原因としたものである場合

この場合には、現在の登記を「合意解除」により抹消をして、その後に再分割後の内容で年月日遺産分割を原因とする登記を申請します。
どちらにしても、抹消、移転の2件の登記申請が必要になります。

登記手続きは以上のように、それほど難しくはありませんが、税法上は、すでに一度相続が完了したとみなされ、遺産分割の再度行ったことで、新たに贈与税や不動産所得税が発生する場合があるので注意が必要です。
 

既に成立した遺産分割協議の全部又は一部の合意解除の成否は、意思表示の解釈に関する一般原則に従って判断すべきものであるから、明示的な解除の合意が認められる場合に限らず、当初及び再度の遺産分割協議の内容の相違、再度の遺産分割協議が行われるに至った原因、経緯、時期、目的、関係当事者の認識等の諸事情を総合して、再度の遺産分割協議が当初の遺産分割協議の全部又は一部の合意解除を前提として成立したものと認められる場合には、黙示的な合意解除が肯認され得るものというべきであり、他方、解除の合意と目すべき事実がある場合でも、右に掲げた諸事情に照らして、再度の分割協議が当初の分割協議によって帰属が確定した財産の移転を分割協議の名の下に移転するものと認められる場合には、その合意に基づく財産権の移転の効力を肯定することができるとしても、その原因を相続によるものということはできないというべきである。そして、相続税法は同法に固有の「相続」概念を規定するものではなく、相続税法の適用においても「相続」の意義は民法におけると同様の概念によるべきものであるから、右に説示したことが妥当するものと解すべきである。