種類株式の種類株主総会を不要とする、すなわち無議決権の種類株式の内容は次のような注意点があります。

優先種類株式を設計する際に、次の各規定を廃除する内容を盛り込む必要があります。

1、会社法第322条2項

(1)ある種類株式を発行・変更等することにより損害が生じるおそれがある種類株式の種類株主総会が必要という規定

A種類株式を発行することによりB種類株式に損害が生じるおそれがあるときはB種類株主総会が必要になってしまいます

(2)322条に規定されてる「株式の発行」は株主割当増資の場合のみ※第三者割当の場合は他の種類の株主にも引受の機会があるため

(3)後から設定しようとすると全員の同意必要4項

2、199条4項

(1)発行対象の種類株主の種類株主総会が必要という規定

(2)199条4項による定めを置きますと、200条4項と795条4項の種類株主総会も不要

(3)後から設定しようとすると定款変更決議が必要。199条4項の規定は種類株式の内容とは解されていないため、322条1項1号ロの種類株主総会決議は不要(なはず)。

3、238条4項

(1)2と同様の趣旨の新株予約権に関する規定です

(2)238条4項による定めを置きますと、239条4項の種類株主総会も不要

上記の点を踏まえて、定款規定を考えると次のようになります。

(定款記載例)

第2章の2 優先株式

(発行可能種類株式総数)
第15条 当会社の発行する各種類株式の発行可能種類株式総数は,次のとおりとする。
普通株式○株
A種優先株式○ 株

(A種優先株式の内容)
第16条 当会社の発行するA種優先株式の内容は下記のとおりとする。
(1)A種優先株式を有する株主は株主総会において議決権を有しない。
(2)①A種優先株式は、毎事業年度において、普通株式に優先して剰余金の配当(優先配当)を受ける。
②A種優先株式は、毎事業年度において、普通株式の配当率に○%を上限として、取締役会において定める割合を上乗せした優先配当率で剰余金の配当を受ける。
(3)当該事業年度における剰余金の配当金額が、前号の優先配当金額に達しないときであっても、次年度以降においてその不足額を填補しない。
(金銭を対価とする取得条項)
第17条 当会社は,取締役会の決議で定める日をもって、A種優先株主及びA種優先株式登録株式質権者の意思にかかわらず、いつでもA種優先株式の全部又は一部を取得し、当会社はこれと引換えに、A種優先株式の払込金額相当額を踏まえてA種優先株式の発行に先立って取締役会の決議によって定める額の金銭を交付する。

(普通株式を対価とする取得条項)
第18条 当会社は、取締役会の決議で定める日をもって、A種優先株式及びA種優先株式登録株式質権者の意思にかかわらず、いつでも種類株式の全部又は一部を取得し、当会社はこれと引換えに、A種優先株式1株につき当会社の普通株式1株をA種優先株主に交付することができる。

(種類株主総会の決議)
第19条 当会社が、会社法第322条第1項各号に掲げる行為をする場合においては、法令に別段の定めがある場合を除くほか、種類株主総会の決議を要しない。
2 当会社は、会社法第199条第4項、第238条第4項に定める種類株主総会の決議を要しない
3  第17条から第20 条までの規定は種類株主総会にこれを準用する。また、会社法第324条第2項の規定による種類株主総会の決議は,議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し,その議決権の3分の2以上にあたる多数をもってこれを行う。

なお、上記のような内容を定めたとしても、322条1項1号のイロハについては、種類株主総会の決議を要しない旨を定めることができない(同3項但書)ため、完全な無議決権とすることはできません。

一 次に掲げる事項についての定款の変更(第百十一条第一項又は第二項に規定するものを除く。)
  イ 株式の種類の追加
  ロ 株式の内容の変更
  ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加