会社分割の際の債権者保護手続について

新設分割の場合と吸収分割の場合に分けて検討する。

1、新設分割を行う場合

新設分割の場合には、新しい会社はこれから設立されるので(手続時には存在しない)、既存の会社の債権者に配慮すれば足りることになります。

したがって、既存の会社の債権者がそのまま債権を請求することができる「重畳的債務引受」条項があれば、基本的には債権者保護手続きは不要となります。ただし、その他にも少し配慮が必要で、まとめると次のとおり。

(1)重畳的債務引受条項

(2)不法行為債務が含まれていないこと(会社分割が合併よりも債権者を害する危険性が高いことへの配慮)

(3)人的分割でないこと(分割と同時に株主への配当等を行うことにより、分割会社の資産が実質的に減少する手続きを取る場合)

この3点をチェックする必要があります。

2、吸収分割を行う場合

吸収分割については、新設分割のように債権者保護手続きを完全に省略することはできません。

分割事業を渡す側については、新設分割と同様に考えることができるのですが、分割事業をもらってその対価を渡す受け皿になるほうの会社については、分割対価の分は必ず会社財産が減ってしまうため(契約内容次第で資本金・資本準備金が減少する場合が考えられる)、債権者保護手続きを省略することができません。

吸収分割については必ず債権者保護手続きが必要となる=公告などのスケジュールで手続きが長くかかることを念頭に予定を組む必要があります。