久しぶりに役員変更の登記依頼がありました。
事例を簡単に紹介すると下記の通り。

・設立時に、発起人の決定で取締役ABC、代表取締役ABを選任した。
・会社実印の登録はAのみが行った。
・この度、Bを平取締役としたいので、Bを代表取締役辞任させたい。
・定款には、代表取締役の選定は取締役の互選によるとの規定がある。

 

ざっと記載するとこのような状態の会社です。
この会社は、設立後の代表取締役については取締役の互選によって選定するという定款規定があります。
しかしながら、設立時の代表取締役は発起人の決定で選定していました。
さて、この代表取締役さんの地位は取締役の地位と「未分化」なのか「分化」なのか…

代表取締役の地位について「分化」又は「未分化」の考察

「未分化」であれば、株主総会で辞任を承認する決議を行うことになりますが、「分化」しているのであれば辞任届で足りるはず。
などと思い悩んでいたのですが、商業登記ハンドブックに記載がありました。

商業登記ハンドブック 第3版 P98
なお、会社成立後は定款の規定に基づく取締役の互選によるとしつつ、設立時代表取締役についてのみ減資定款の附則で直接定めた場合において、設立段階の代表取締役の地位と取締役の地位とが分化しているとみるか否かについては、両論あろうが、会社の意思としては基本的に互選代表制を採用していること、従来の実務では、設立時代表取締役を成立後の代表取締役と区別しておらず、このような場合は互選代表制とみたものと考えられること等から、少なくとも、会社成立後に代表取締役の地位と取締役の地位とが分化している場合には、設立時代表取締役の就任承諾を別途要すると考えるのが穏当であるように思われる…

 

すなわち、直接選定した設立時代表取締役であっても、設立後の代表取締役の選定が間接選定方式とされているのであれば、「分化」した代表取締役とみるという見解のようです。
取締役から「分化」した代表取締役であれば、辞任の際に必要なのは辞任届ということになります。

辞任届に押印する印鑑の問題

次に検討したのが、辞任届に押印してもらう判子の問題です。
会社実印の届出をしていない代表取締役でしたので、個人実印での押印をお願いして、印鑑証明書の取得もお願いしました。
最も、会社実印の登録をしていない代表取締役については押印はなんでも構わないので、認め印での押印もOKではありました。
今回は、ご本人の意思確認等の意味も含めて実印+印鑑証明書をお願いすることにしました。

その他の添付書面の問題

その他、この会社が代表取締役の選定方式として間接選定方式を採用していることを証するために、定款の添付が必要になります。

結果的に添付することになるもの

1、定款
2、辞任届
3、委任状

以上の3点になりました。
少し珍しい感じのする添付書面の並びです。
役員変更登記はかんたんと仰る方が多いのですが、実は一筋縄ではいかないもののほうが多い気がします。

株式会社の機関 (商業登記全書) 単行本 – 2008/2神崎 満治郎 (編集), 鈴木 龍介 (編集)